下町ロケット2、原作、池井戸潤

池井戸潤氏の書き下ろし小説「下町ロケット」の第4弾ヤタガラスが9月28日に発売になりました。

10月14日から放送されるTBS日曜劇場のドラマ「下町ロケット」続編の原作にもなっているこの小説の結末を早く知りたいと思っているファンは大勢いると思います。

そこで、小説「下町ロケット ヤタガラス」のあらすじ(ネタバレ)をまとめてみました。

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下町ロケット2の原作「ヤタガラス」のあらすじ(ネタバレ)

財前部長の夢

前作の「下町ロケット ゴースト」では帝国重工宇宙航空部長の財前道生が、打ち上げたロケットで宇宙に運んだ人工衛星「ヤタガラス」を日本の農業の将来を救うために利用したいと語ったところで結んでいました。

今作の「下町ロケット ヤタガラス」では、それを実現するため人工衛星「ヤタガラス」による通信制御によってトラクターを自動運転する技術を持つ北海道農業大学の野木教授が登場します。

しかし、野木教授は産学共同事業には懸念を抱いていて財前の申し入れには応じようとしていなかったのです。
そこで、財前は野木教授の学生時代の友人でもある佃航平に説得を依頼してきたのです。

財前は帝国重工と野木教授それに佃製作所のエンジンとトランスミッションが、トラクターの自動運転化への鍵になるチームだと考えていたのです。

財前に請われて野木教授を訪ねた佃社長でしたが、そこで野木が以前にもキーシンという会社から誘いを受けて共同研究を行った際に自分の研究成果を盗まれた経験があることを知るのでした。

しかも、帝国重工内ではエンジンとトランスミッションを機械製造部で作り、大型のトラクターにすることを役員の的場俊一が強引に決めてしまいます。

その結果、このプロジェクトから佃製作所は外されることになったのです。

それを知った野木教授もプロジェクトへの参加を断ったのです。

だが、佃公平は自分の会社が帝国重工のプロジェクトから外されても日本の農業の将来のために野木教授にプロジェクトに協力して欲しいと頼むのでした。

ダーウィン・プロジェクト

一方、7年前に野木教授からトラクターの通信制御システムを盗んだキーシンの戸川譲とダイダロスの重田登志行、それにギアゴーストの伊丹大が組んで開発した自動運転トラクター”ダーウィン”はすでにテスト走行の段階にありました。

彼らは帝国重工の中で的場俊一がこの新トラクターのプロジェクト総責任者になったことの情報をすでに得ていたのです。

重田は以前社長を務めていた重田工業を的場によって潰され、伊丹は的場の裏切りによって帝国重工に居場所を失って退職に追い込まれた恨みがあったのです。

そして2人の復讐は、緻密に計画されたものだったのです。

その計画は、北堀というテレビ番組制作会社の社長が指揮し進められてゆきます。

テレビニュースを使って「ダーウィン」のデモンストレーション走行の様子を写させたり、週刊誌を使って帝国重工の的場による下請け潰しの記事を書かせていたのです。

これによって、中小企業連合「ダーウィン・プロジェクト」対悪徳大企業・帝国重工という構図を作り上げようとしていました。

アグリジャパンの明暗

毎年秋に岡山で開かれる農機具メーカーが出展する一大農業イベントがアグリジャパンです。

今年は重田たち「ダーウィン・プロジェクト」の自動運転トラクター”ダーウィン”と帝国重工が出展する試作機”アルファー1″が、その展示会の目玉になっていて、用意された圃場(ほじょう)でそれぞれ30分ずつの持ち時間でデモンストレーションをすることになっているのです。

ニュース映像を撮るマスコミのテレビカメラが映し出す中、まず”ダーウィン”が動き出します。
遠隔操作で正確に狭い畦道(あぜみち)を走り、田の先端にたどり着くと半回転して田の中に下りて耕してゆきます。

更に、端まで来ると踵(きびす)を返して正確に田を耕す動作を繰りかえし、障害物として立てられていた案山子(かかし)もきれいに避けて進みます。

そして、時間が来ると再び畦道に戻って出発点へ戻ったのです。
こうして”ダーウィン”は完璧なデモンストレーションを終えたのでした。

次に圃場へ登場したのが帝国重工の”アルファー1″です。

“ダーウィン”と同じように畦道を走行し、田んぼに降りて耕す作業を繰り返していたところまでは遜色ないデモンストレーションでしたが、案山子が立てられた場所まで来たときに大きな違いが出てしまいます。

案山子を避けることはしないで踏み潰してしまったのです。

さらに致命的なことが起こります。

作業を終えて畦道に戻った”アルファー1″は走行中、畦道を踏み外し横転して水路に落ちてしまったのです。

会場からは驚きのどよめきが沸き起こり、騒然とした雰囲気になります。

こうして「ダーウィン・プロジェクト」対帝国重工の戦いの第1幕は、完全なる「ダーウィン・プロジェクト」の勝利に終わったのでした。

北見沢での屈辱

この不様な負け方を目の前で見せ付けられた帝国重工の社長・藤間秀樹は、的場俊一にエンジンとトランスミッションを外注から内製化に変更した理由を厳しく問います。

そして、財前が当初企画したとおり日本の農家が使える小型のトラクターを至急調達するように命じます。

その結果、一度はプロジェクトから外した佃製作所にエンジンとトランスミッションを帝国重工は外注せざる得なくなります。

こうして、再び佃製作所は、帝国重工の自動運転トラクターのプロジェクトに復活することになったのです。

しかし、ここからが試練の連続でした。

佃製作所のエンジンとトランスミッションを搭載し小型化した「アルファー1」と「ダーウィン」は、再び北海道の北見沢で対決をすることになったのです。

ICT農業推進プログラムの推進に力を入れている浜畑総理大臣が、大物政治家を引き連れてモデル地区となっている北見沢を視察する際に、先端農機具である「アルファー1」と「ダーウィン」の実験走行の様子を見学したいと言い出したのです。

これは「アルファー1」と「ダーウィン」の対決第2弾と言っても良いイベントになったのです。

しかし、準備をして向かえた当日にアクシデントが起きます。

浜畑首相の乗った飛行機の到着が遅れて、開始直前になって視察時間が短縮されて実験走行は「ダーウィン」のみとなってしまうのです。

会場で「うちのアルファー1」も見て行ってくださいとすがりつく的場俊一に浜畑首相は、「君が的場さんですか。あまり中小企業をいじめないでください」と言い残し去ってゆきます。

販売が始まっても「ダーウィン」人気は止まりません。

一方、帝国重工の「アルファー1」は改善されて「ダーウィン」を上回る性能があるのに売り上げは全く伸びないのです。

そこで、的場俊一が取った対策が大きな波紋を呼ぶことになるのです。

帝国重工の下請けで「ダーウィン・プロジェクト」に参加している中小企業に取引条件改定の圧力をかけたのでした。

実質的な取引停止予告です。

震え上がった下請け会社は「ダーウィン・プロジェクト」からの離脱を重田や伊丹に申し出てきて「ダーウィン」は部品不足で製造休止に追い込まれます。

そこで、重田と伊丹は元弁護士で服役を終えたばかりの中川京一を法律顧問にして一計を案じます。

的場から圧力をかけられた下請け会社20社が、帝国重工を相手に下請法違反で訴えたのです。

それを週刊誌が記事にして載せたことにより、的場俊一は社会からも社内からも非難を受けて、ついに帝国重工を退職する結果に追い込まれたのです。

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ランドクロウ

この騒動を経て、「ダーウィン・プロジェクト」は生産を再開させ、勢いを取り戻します。

発売開始から1年が経つ頃、「アルファー1」から「ランドクロウ」に名前を換えた帝国重工の自動運転トラクターの方も、徐々に性能の良さが認められ売り上げも順調に伸びてきていました。

そんな折、「ダーウィン」を買った農家から「作業中に突然エンジンが止まって動かなくなる」という苦情が相次ぎます。
これに対応した「ダーウィン・プロジェクト」は故障した「ダーウィン」を回収して分解し原因を探ろうとしますが、理由がトランスミッションにあることは判ったものの対策が立てられません。

トランスミッションの設計を担当したのは島津裕だったからです。

現在は佃製作所で「ランドクロウ」のトランスミッションを設計しています。

伊丹大は島津をギアゴーストから追い出した経緯もあり、本人に不具合の原因を聞くことが出来ません。

「ランドクロウ」を秘密裏に購入して分解するとギアの一部が改善されていることを掴みますが、それを真似ることは佃製作所の特許権を侵すことになり出来ません。

伊丹が出来ることは、佃製作所と特許権使用の許諾契約を結ぶことだけです。

しかし、これも以前にギアゴーストの危機を助けてくれた佃社長を裏切って、ダイダロスの重田と組んだ過去があるため伊丹は躊躇するのでした。

天才技術者と伊丹の懇願

しかし、”ダーウィン”の販売代理契約先のヤマタニの工場長からリコールを促されてからは、伊丹は面目などかまっていられなくなります。

佃製作所に赴き、佃社長に特許権使用の許諾を申し入れますが、当然、佃社長は断ります。しかし他に手がない伊丹は懇願するため何度も佃製作所を訪れますが、それでも相手にされません。

「ダーウィン・プロジェクト」の終焉は目の前に迫っていました。

誰のために

そんな時期、佃社長は新潟の実家の農業を継ぐために退職した殿村を訪ねた帰り、故障した”ダーウィン”とそれを直そうと四苦八苦している農民を見かけます。

その周辺では、父親の様子を心配そうに覗き込む家族の姿がありました。
“ダーウィン”は通常の手動トラクターより高額で、多額のローンを組んで購入したにちがいありません。

それを知っているだけに佃航平の胸は痛みます。

「オレたちの目的は、日本の農業を救うことだよな」佃は、車に同乗していた山崎、島津、軽部、そして立花に問いかけます。
すると、そこにいる全員から「社長、お願いです。救っていただけませんか」の声が返ってきたのです。

数日後、「ダーウィン・プロジェクト」が沈痛な雰囲気で伊丹大からトランスミッションの重大な欠陥によって製造中止に追い込まれる見通しであることを報告している最中に、佃社長は突然現れます。

そして、特許権使用の許諾をすることを宣言するのです。
「ダーウィンを信じて購入した農家の人たちを救っていただきたい。」

まとめ

原作小説「下町ロケット」ゴーストとヤタガラスが人工衛星「ヤタガラス」を利用した自動運転のトラクターを題材にしていると知って、私は驚きを隠せませんでした。

その理由は、そのタイミングがあまりにタイムリーだからです。
日本の農業の危機が今ほど叫ばれている時はありません。

その解決策として、いま自動運転の農機具は大きな注目を浴びています。

その上、まるでドラマ「下町ロケット」の放送開始に合わせるかのように、2018年秋からGPSを利用した自動運転のトラクターがヤンマーやクボタをはじめ多くの国内農機具メーカーで次々と販売が開始されるのです。

参考:https://response.jp/article/2018/06/27/311297.html

参考:https://www.kbt-press.com/news/autonomous-farm-machinery

この原作小説は架空のお話などではなく、正に今の農業を語る実話なのです。

 

ドラマ「下町ロケット」の8話(12/2放送)の感想を書きました!

また原作のネタバレもまとめました。

よかったら併せてご覧ください!

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